ルワンダ月報 2010年1月
ルワンダの英字日刊紙「The New Times」の記事を当館限りでまとめたものです。記事の中の客観事実は日本政府やルワンダ政府の公式見解と異なる場合がありますが、当館では文責は負いかねますので、ご了承下さい。
(1)内政
ア PSイムベラクリ党の煽動的発言についての謝罪(8日付)
PSイムベラクリ党は政党フォーラム(PPF)を構成する9党に対し、煽動的発言についてのンタガンダ党首による謝罪を発出した。一方で、カイゲマPPF総長は、PSイムベラクリ党に対していかなる行動をとるかについては未定であると述べた。PSイムベラクリのこうした態度は、PPFの原理を認めないとする従来の立場からの大きな転換である。同党首は独裁的手法とジェノサイドを肯定する立場を批判され、同党内の一部の議員と決裂している。
イ ハビヤリマナ元大統領の自軍による殺害(12日付)
ハビヤリマナ元大統領の乗った飛行機を撃墜した事件についての調査報告書(ムチンジ報告書)は、同元大統領が自分の取り巻きの陰謀により殺害されたと結論づけた。同報告書によると、バゴサラ大使をはじめとするフツ族の過激派で、「アカズ」と呼ばれる同元大統領の取り巻きの一部が、同元大統領がルワンダ愛国戦線(RPF)との権力分担を合意しつつあることに不満を持ち、同元大統領を取り除くことに決定し、ツチ族に対するジェノサイドを画策した。また、同報告書は、バゴサラ大佐が共謀した対空大隊(LAA)は、フランス、リビア、北朝鮮及びソ連で訓練を受けていたと述べる。一部の報告書がハビヤリマナ元大統領殺害がRPFに画策されたものだと結論づけているのに反し、ムチンジ報告書は、国連ルワンダ支援団(UNAMIR)の英国人大尉の証言を引用し、同元大統領の飛行機を撃墜したミサイルが、同元大統領の護衛群の制空権から発射されたと述べる。ブラック・ボックスの在処についてムチンジ判事は、事故現場からフランス人が多くの証拠を持ち帰り、ブラック・ボックスもフランスにあると主張する。カルガラマ司法大臣は、多くの記録がフランス政府に保管されており、いずれフランスからルワンダに返還されるだろうと述べる。
ウ インガビレ党首の違法に対する政府の非寛容(18日付)
ハレリマナ国内治安大臣は、インガビレ統一民主軍(UDFインキンギ)党首のジェノサイドについての修正主義は明らかに違法であると警告した。先日大統領選挙への立候補のために自らの党を登録するためルワンダへ入国した同党首は、1994年には二重のジェノサイドがあったと発言し、1959年に起きたツチ族に対するジェノサイドを表す言葉を引用しつつ、自らが大多数による革命を成し遂げると述べた。
エ 各政党によるインガビレ党首への非難(18日付)
各政党と反ジェノサイド委員会(CNLG)はジェノサイドの事実を否定し、民族分離を扇動するUDFインキンギを強く非難した。オランダに拠点を置くUDFインキンギを率いるインガビレ党首は先日16年間のヨーロッパへの自主亡命の後、ルワンダに帰還したが、到着時とジェノサイド・メモリアルを訪れた際の発言は、同党首の民族分離を促す姿勢を明らかにした。キガリ国際空港に到着して間もなく、同党首は、自分がルワンダ人を「恐怖と貧困と非効率的なガチャチャ」から解放するためにやってきたと発言した。CNLGはこうした発言はジェノサイド修正主義にあたり、容認できず、当局は同党首を拘束して発言に対する説明を求めるべきだと述べた。
オ 議会リトリートの中心議題はジェノサイド(20日付)
先日議会リトリートが終了する際、両院の議員は、ジェノサイド・イデオロギーと修正主義に対する締め付けを強化することに合意した。
カ インガビレ党首によるジェノサイド容疑者の訪問と支援の約束(21日付)
20日、インガビレ党首はギセニのジェノサイド容疑者を訪問し、同党首が彼らを苦境から救うと発言した。今週初め、同党首はフツ民族主義を提唱したムボニュムトワ初代大統領の故郷を訪ね、墓の前で瞑想を行なっている。
キ インガビレ党首の政治的信任への議会の疑問(26日付)
多くの議員がインガビレ党首の政治的信任への強い批判を行った。その中のムカイセンガ議員は、同党首のことを「ルワンダのことを全く知らず、根拠の無い噂に基づいている」と批判した。
(2)経済
ア カレガ大臣による2014年までの国際鉄道開通の表明(13日付)
12日、カレガ・インフラ大臣は、計画通りに事が進めばEACの国際鉄道が2014年までに開通すると述べた。同大臣によれば、ダルエスサラーム、ムソンガチ、キガリ間のルートについての調査が終了したので、間もなく同プロジェクトの調整を行うチームが発足し、2010年中に資源の流動が始まり、建設は2011年に始まり14年に終了する見込みである。ダルエスサラームとウガンダを繋ぐ路線はタンガ、ムソマ、アルーシャ、ポートベルを経由し、ジンジャに達する予定である。昨年4月、EACのインフラ大臣は同プロジェクトのマスター・プランを作成しているカナダ企業CPCSトランスコム・インターナショナルに対してスーダンとコンゴ(民)も同国際鉄道に含めるよう提言した。
イ 金融連合、政治連盟が2010年のEACの最重要議題(13日付)
共通市場議定書への署名と関税同盟の実施を受け、EACは金融連合と政治連盟の設立が直近の最重要課題であると発表した。EACの統合が進展するにつれ、メンバーの5カ国は2010年にかけて、安全保障分野での一層の協力、共通市場の実施、金融連合と政治連盟の設立に向けて努力を集中する。加えて、ムワパチュEAC事務総長によれば、経済連携協定や食料安全保障、気候変動も重要な議題となる。
ウ ウガンダにおける石油の発見がパイプライン計画を遅延させる可能性(13日付)
最近、ルワンダとリビアとの会談が行われ、ウガンダで大量の石油が発見されたことにより、ケニアからウガンダを経由してルワンダに達するパイプライン建設が大幅に遅延あるいは、完全に白紙になる可能性があると、同会談へのリビアの代表団が分析している。同代表団によれば、ウガンダ政府は自国内での石油発見により独自の精製所を設立することを計画しており、それによってケニア・ウガンダ間を繋ぐパイプラインが経済的に最適なものではなくなる。MOUによるとウガンダ・ルワンダ間のパイプライン事業はケニア・ウガンダ間のパイプライン事業の延長であるため、ウガンダの同計画への政策変更により大きく遅延されるおそれがあり、適正調査を行う予定のリビア企業、タモイル・アフリカ・ホールディングスがウガンダの政策が明らかになるまで調査を行わないとしている。
エ カガメ大統領によるハーバード・ビジネス・スクールの代表団の接受(15日付)
14日、カガメ大統領はハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の代表団と会談を行った。41人のスタッフや学生からなるHBSの代表団はルワンダに10日間滞在し、金融・銀行学校(SFB)を含む様々な機関との話し合いや交流を行う。同代表団長のウェルズ教授は、ルワンダは1994年依頼の急速な発展により、アフリカの中でHBSの代表団のはじめて訪れる国となった。
オ リビアによる対ルワンダ投資の拡大(20日付)
リビア政府傘下の投資グループ、リビア・アフリカン投資ポートフォリオ(LAP)は、ルワンダに対する投資を拡大する予定である。ルワンダ開発局(RDB)のガラCEOは、LAPが鉱物、農業、不動産、観光分野に対する興味を示していると明らかにした。LAPは既に電話産業、接客業に投資し、ルワンダテル及びライコホテルを所有している。
カ 投資家へのEAC共通ビザ発給(20日付)
19日、ムカルリザEAC大臣は、EACが投資家に対してEAC共通ビザの発給を計画していることを明らかにした。昨年には、カガメ大統領がEAC内で観光客に対して共通ビザを発給することを提案している。
(3)経済協力
コモンウェルスによるVISION2020への援助(21日付)
20日、シャーマ・コモンウェルス事務局長はルワンダに到着し、ルワンダのVISION2020を支援することを発表した。また、VISION2020の6原則、特にガバナンス、法の支配、民主主義がコモンウェルスの重点と一致し、強みであるためによく支援することができ、さらにその他の資源、技術開発、教育、機構構築の分野でも協力できると述べた。
(4)外交
ア カガメ大統領のクシュネル仏外務大臣の接受(8日付)
カガメ大統領は、ルワンダ訪問中のクシュネル仏外務大臣と会談を行い、両国の関係を強固にするために過去の問題に対する議論を行うことに合意した。両国は、ブルギエール判事による告発以来断絶した外交関係を1ヶ月前に再開した。同会談の後、ムシキワボ外務協力大臣は、任命された両国の大使ができるだけ早く着任するように緊急な手段を講じる必要があると述べた。また、同外務協力大臣は、両国が関係強化のための必要事項について話し合ったことが最も重要であると述べた。クシュネル大臣は、「最も重要なことは、両国がこの会談と、これまでの過程で達成してきたことを理解することである。個人的な意見を言えば、フランス国民はジェノサイドと両国の関係についてこれまで十分な説明を受けていなかったので、今後、そうした説明をしたいと思う」と述べた。ルワンダによって告発されたフランス在住のジェノサイド容疑者の問題について同大臣は、最近ルワンダを訪問して同裁判のための調査を行っている二人の上級判事に委ねられるべきであり、外務大臣が介入すべきことではないが、3日前にフランスの司法組織は国際司法部を開いたので、良い方向に進むであろうと述べた。また、ルワンダのジェノサイドにおけるフランス政府の関与容疑に関する報告に対してフランス政府のとるべき行動について、同大臣は詳細を明かすことを否定した。
イ サルコジ大統領の来月の訪問(8日付)
7日、クシュネル仏外務大臣は、翌月サルコジ仏大統領がルワンダを訪問すると発表した。同訪問は、1994年にルワンダ愛国戦線(RPF)が政権をとって以来の初のフランス大統領の訪問であり、両国の関係が完全に修復したことを示す重要な出来事となる。同大臣は、訪問日程として2月26日を提案した。7日、同大臣はルワンダ議会のムカンタバナ議長と会談し、将来の開発プログラム及び協力して過去と向き合う必要性について話し、また未就任のフランス大使を紹介するために議会を訪問したことも述べた。さらに、同大臣は、両国関係の修復が順調なので、将来の対話はルワンダの歴史に重点が置かれると述べた。同大臣によると、大使館開館後、フランスの対ルワンダ政策はフランス学校の再開、フランス文化センターの再開、都市開発プロジェクト、保健分野への投資の4分野を重点にし、地域レベルでは、コンゴ民主共和国(コンゴ(民))、特にキブ地域の平和構築・安全保障において主要な役割を果たす。
ウ ルワンダ・リビア間の二国間会談(8日付)
5日、キガリにおいてリビアとルワンダは二国間会談を行い、共同常設委員会(JPC)の再開について話し合った。リビアはルワンダへの投資を増加しており、例えばルワンダテルの80%のシェアをリビア資本が所有している。
エ ドイツの政府代表団の訪問(9日付)
8日、ネーベル独連邦経済協力大臣を筆頭にドイツの政府代表団がルワンダを訪問し、ルワンダとドイツは、修復された外交関係をより高次のものに発展させることに合意した。カガメ大統領は、両国間にあった問題が完全に解決され、以前にもまして強い外交関係を発展させたいと述べた。同大臣と大統領は、ガバナンス、市民社会の強化、エネルギー、教育、予算援助等、経済協力の可能な分野について話し合った。最近のドイツにおけるFDLRの指導者たちの逮捕について、カガメ大統領はこうした進展は二国間関係が改善した結果というよりも国際社会の中で同問題が重視されてきたことによると述べた。
オ カガメ大統領によるオランダ議員の接受(9日付)
カガメ大統領は、2日間にわたりルワンダを訪問中のオーメル常設外交委員会長を筆頭にしたオランダの議員と会談を行い、二国間関係や経済協力について話し合った。また、ルワンダ議会で審議中のジェノサイドの関する法案も議題に上がり、ムシキワボ外務協力大臣はオーメル会長に対し、ルワンダが人権侵害を行うような法律を通さないことを確約した。
カ ベルギー副首相の今月訪問(9日付)
ベナケレ白副首相兼外務大臣が22日ルワンダを訪問することが予定されていることが判明した。会談では二国間協力が議題となる見込みである。両国は昨年1月に3812万米ドルに相当する5つの経済協力協定に署名を行った。
キ フランスによる対FDLR軍事活動への協力合意(12日付)
11日、ムシキワボ外務協力大臣は、先週行われたクシュネル仏外務大臣との会談の中で、フランス政府が対FDLR軍事活動においてルワンダとコンゴ(民)に協力することを約束したことを明らかにした。具体的には、両国はフランス政府が国連安全保障理事会の中でFDLRに対して制裁を課すよう主導をとることに合意した。
(チ)閣議によるフランス大使の承認(15日付)
13日、閣議はローレン・コンティニ氏をフランス大使として承認した。駐ジンバブエ大使の経験があるコンティニ大使は大湖地域へのEU代表顧問を務めたこともあり、東アフリカ地域に精通している。
ク ザンビア大統領の訪問と、ザンビアによるジェノサイド容疑者の取締り協力(19日付)
18日、ルワンダを訪問中のバンダ・ザンビア大統領はカガメ大統領と会談し、大湖地域の安全保障と、南部アフリカに亡命中のジェノサイド容疑者の問題について話し合い、二国間対話のための共同常設委員会を再開し、ザンビアに亡命しているジェノサイド容疑者問題に最終的な解決を与えることに合意した。また、ザンビアに在住のルワンダ人難民については、ジェノサイドへの関与が無い限り帰還を望む者についてはルワンダへ帰還させるよう協力することが合意された。
ケ カガメ大統領によるコモンウェルス議長の接受(22日付)
21日、カガメ大統領はシャーマ・コモンウェルス事務局長の接受を行った。同事務局長は、ルワンダとの経済協力を行う分野について話し合ったことを明らかにした。「お互いに利益のある点について、内容のある話をすることができた。ルワンダの成し遂げた大きな発展は、コモンウェルスにとって大きな利益となるだろう」と、同事務局長は述べた。また、同事務局長は、次のステップは3月に行われるセレモニーで、ルワンダの国旗をロンドンに立てることであり、コモンウェルス記念日にカガメ大統領を迎えることを楽しみにしているとも述べた。同事務局長によると、主な協力の分野はガバナンスと人的資源開発であると述べた。ムシキワボ外務協力大臣によると、同事務局長の訪問では、ルワンダと他のメンバー国が、経済、教育、ICT、貿易分野でどのように協力できるかを話し合うことも目的とされた。また、ルワンダは本年9月のコモンウェルス青年会議を主催することになったと同大臣は述べた。
コ フランス大使等の信任状の提出(23日付)
22日、カガメ大統領はフランスやEUを含む10大使からの信任状を受け取った。コンティニ・フランス大使は外交関係の再開により、両国が伝統的な友好的な関係を取り戻せるだろうと述べた。ミシェル・アリオンEU大使は、ルワンダの持続的発展というEUの政策を追求することに専念し、2010年は特にEACと大湖地域経済協力計画(CEPGL)の地域統合過程を支援すると述べた。他に、ブルンジ、ザンビア、韓国、スーダン、セルビア、パキスタン、シンガポール、メキシコの大使が信任状を提出した。
サ 新たなフランス人判事の到着(25日付)
先週末にかけて、新たな二人のフランス人判事がフランス在住のジェノサイド容疑者、シムビカングワ氏の調査のためルワンダを訪問した。シムビカングワ氏はジェノサイドを行なった前政権の中心グループ「アカズ」の一員だった。
シ 中国によるコンゴ(民)東部地域の安定への協力(26日付)
25日、二国間会議のためにルワンダを訪れていたジュン中国副外務大臣は中国政府がコンゴ(民)東部地域の安定のために協力することを明らかにした。同副大臣は、中国が安全保障理事会の常任理事国として大湖地域が平和と安定を享受できるように強く関与すると述べた。また、同大臣は、ルワンダとコンゴ(民)が関係を改善し、共に不法武装組織と戦っていることは、コンゴ(民)東部や大湖地域全体の安定のために非常に重要であるとも述べた。ムシキワボ外務大臣は同副大臣に対し、国交正常化の中で達成されたルワンダとコンゴ(民)の共通した立場を中国が支援することを求めた。同副大臣はその後、ギソジ・ジェノサイド・メモリアルを訪問した。
(5)安全保障
ア 2010年の見通し:ルワンダ・コンゴ(民)関係とFDLRの脅威(5日付)
最近のコンゴ民主共和国(以下「コンゴ(民)」)とルワンダの大使の承認と首脳会談が、両国関係が最良の状態にあることを示すことに間違いない。これらの出来事は、ルワンダ解放民主軍(FDLR)掃討の文脈に関わる、2010年の二国間関係を前兆するものであろう。昨年の二つの掃討作戦、ウモジャ・ウェツ(ルワンダ・コンゴ(民)国軍の共同作戦)とキミアII(コンゴ(民)国軍・MONUCの共同作戦)はFDLRの戦力を削ぎ、コンゴ(民)文民や資源に対する支配を弱めてきた。とはいえ、最も人口の多いキブ地方が安全になる一方で、より遠隔地にあるコンゴ(民)東部が依然無法地帯にあることは疑いない。二つの軍事作戦は有効であったが、FDLRは依然として脅威である。
イ ベルギー陸軍にとって、ルワンダ国軍(RDF)は地域安全保障の重要なパートナー(20日付)
ベルギーとルワンダの将校はキガリでの3日間の二国間協力会議を終え、ベルギー陸軍代表を率いたモトマンズ大佐はガチンジ国防大臣表敬の後、地域の安全保障において両国が重要なパートナーであると述べた。
ウ GEPGLの各国軍によるFDLRへの圧力強化への合意(21日付)
19日、キミアIIの評価のためにコンゴ(民)で会談を行なった大湖地域経済共同体(GEPGL)各国(ルワンダ、コンゴ(民)、ブルンジ)の参謀長は、FDLRへの圧力を強化し、現在進行中のアマニ・レオ作戦の成功を支援することに合意した。