ルワンダ月報 2010年7月
ルワンダの英字日刊紙「The New Times」の記事を当館限りでまとめたものです。記事の中の客観事実は日本政府やルワンダ政府の公式見解と異なる場合がありますが、当館では文責は負いかねますので、ご了承下さい。
(1)内政
ア PSイムベラクリ党の大統領選挙からの離脱(2日付)
1日,唯一の野党であるPSイムベラクリ党のムカブナニ党首は,同党が大統領選挙に立候補しないことを表明した。その理由として,同党首は,前党首のンタガンダ氏によって党に内紛が起こり,現在同党が再建中であるため,大統領選挙に立候補するには時期尚早であることを述べた。ンタガンダ氏はジェノサイド・イデオロギーの主張により,同党から除名されたものの,未だに党首を自称している。これまでに大統領選挙には,ルワンダ愛国戦線(RPF)の現職カガメ大統領,社会民主党(PSD)のンタウクリリャヨ氏,自由党(PL)のヒギロ氏,進歩協調党(PPC)のムカバラムバ氏の4人が立候補している。
イ MHCによる公平な報道の提唱(2日付)
1日,選挙報道に関するメディアのワークショップにおいてムラマ・メディア高等委員会(MHC)事務局長は,メディアは党派主義の報道をせずに,全ての党について公平な報道を行うべきであると呼びかけた。
ウ 地方の指導者たちによる,良いガバナンスの賞賛(6日付)
解放記念日において,地方自治体の指導者たちは,カガメ大統領の下でルワンダのガバナンスが改善し,それが経済発展と福祉の向上につながったと賞賛した。また,発展のための愛国心の育成の重要さについても述べられた。
エ NECによる4人の大統領選挙候補者の登録(8日付)
7日,国家選挙委員会(NEC)はRPFのカガメ大統領,PLのヒギロ議員,PSDのンタウクリリャヨ議員,PPCのムカバラムバ議員を8月9日の大統領選挙の候補者として発表した。カラングワNEC議長によれば,独立候補は申請されていない。選挙キャンペーンは7月20日から8月8日まで行われる。また,ムニャネザNEC事務総長によれば,同選挙の予算のうち83%にあたる74億ルワンダ・フラン(RWF)が政府予算から確保されており,13億RWFがドナーから支援される。
オ ンタガンダ氏と共謀者の法廷への出頭(8日)
7日,PSイムベラクリ党の派閥指導者であるンタガンダ氏とその共謀者の裁判が再開した。同氏とその仲間は,6月24日,当局に事前通知無しにデモを行った容疑で逮捕されていた。同氏の仲間には,UDFインキンギの会計担当であるムヒルワ氏,事務局長であるシボマナ氏等が含まれる。
カ 「Umurabyo」紙の編集者の逮捕(10日付)
国家警察は,隔週発行のキニアルワンダ語紙「Umurabyo」の編集者を,逮捕した。同紙による暴力煽動やジェノサイドの事実の否定等が同編集者の逮捕の理由である。同紙は,1994年のジェノサイドを煽動した経緯がある。
キ ジャーナリスト殺害の容疑者の確定(9日付)
検察当局によると,ジャーナリストのルガムバゲ氏を殺害した容疑者は,元軍人のンドゥグヤング氏と,殺害のために同氏を雇ったカレメラ氏である。カレメラ氏は1994年のジェノサイド中,ルガムバゲ氏に兄弟を殺害された。ンドゥグヤング氏は,コンゴ(民)から不法に入手した銃を用いてンドゥグヤング氏を殺害した。
ク 300人以上の大統領選挙監視人の登録(14日付)
13日,NECのムニャネザ事務局長は,現在までに300人以上が大統領選挙の監視団として登録をしたと発表した。これらの監視団には,東部南部アフリカ共同市場(COMESA),外交団,地域選挙委員会などが含まれる
ケ 警察による行方不明の緑の党副総裁の捜索(14日付)
南部県の警察は,13日の早朝から行方不明となっているルウィセレカ緑の党副総裁の捜索を行っている。警察報道官によると,同副総裁はブルンジに逃走した可能性がある。
コ 緑の党副総裁の殺害(15日付)
14日,警察は行方不明のルウィセレカ副総裁の遺体を発見した。
サ 緑の党副総裁の殺害容疑者逮捕(16日付)
15日,警察はルウィセレカ副総裁の殺害容疑者を逮捕した。ンティヴグリズワ容疑者は,ルウィセレカ副総裁のビジネスパートナーであった。警察は,ルウィセレカ副総裁の所持金が盗まれていることから,金銭目的の殺害と分析している。
シ 選挙対策プレス・センターの開館(16日付)
15日,MHCはプレス・センターを開館した。プレス・センターは,大統領選挙について地元や外国のジャーナリストが適切に報道することを支援するために設立された。高速インターネットの配備された同施設では,ジャーナリストに必要な選挙関連情報が即座に入手できる。
ス EU大使からの選挙監視団についての説明(16日付)
15日,外務協力省で行われた大統領選挙に関するブリーフィングの中で,アリオンEU大使はEUがブラッセルから監視団を送らない理由につき,世界で行われる大統領選挙のうち,EUが予算的制約からルワンダを優先視していないからであると説明した。
セ 緑の党による容疑者逮捕の歓迎(17日付)
緑の党は,ルウィセレカ副総裁を殺害したと思われる容疑者の逮捕を歓迎した。同党の公式文書は,「緑の党は,本件容疑者の逮捕を歓迎する」と述べている。
ソ RPFによる選挙キャンペーン計画の公表(17日付)
16日,RPFは大統領選挙キャンペーン計画と選挙対策チームを発表した。マニフェストには,良いガバナンス,生活水準の改善,司法,経済の発展が含まれる。バジヴァモ副総裁は,過去7年の統治の中でRPFがガバナンスの改善やジェンダーの平等化,経済成長等で実績を作ってきたと述べた。
タ アフリカ・ジャーナリスト連盟総裁による外国人NGO批判(18日付)
17日,メディア会議のためにルワンダを訪問したオマール・アフリカ・ジャーナリスト連盟(FAJ)総裁は,アフリカのメディアを監視する役割の外国人NGOが,自分たちが有名になるために事実を曲げてアフリカを批判していると述べた。
チ 警察による選挙期間中の安全の保障(19日付)
ガサナ警視総監は,国家警察は大統領選挙期間中に治安維持機能を強化し,安全を保障すると述べた。
ツ RPFの選挙キャンペーン開始式への数千人の参加(21日付)
20日,国立アマホロスタジアムで開催された選挙キャンペーンの開始式に数千人のカガメ大統領の支持者たちが集まった。カガメ大統領は,政策の課題は機会均等,全ての国民に対する医療保険,農業の発展,技術・インフラの発展,汚職撲滅,雇用創出,能力開発であると述べた。
テ PSDの選挙キャンペーン開始(21日付)
20日,PSDはムハンガで選挙キャンペーンを開始し,候補者のンタウクリヤヨ氏は国民の統一,不正と汚職との戦い,経済社会開発を課題に挙げた。
ト PPCの選挙キャンペーン開始(21日付)
20日,PPCは選挙キャンペーンを開始し,候補者のムカバラムバ氏は,幼稚園から高校に至るまでの無料教育を約束した。
ナ PLの選挙キャンペーンと農家への支援の約束(21日付)
20日,キレヘ郡でPLは選挙キャンペーンを開始し,候補者のヒギロ氏は東部県のンゴマ郡とキレヘ郡の農民へ,農産物が国際市場で競争力を持つよう支援すると約束した。
ニ NECによる最終有権者登録の発表(24日付)
23日,NECは大統領選挙投票有権者の最終版リストを公表し,5178492人に投票資格があることを発表した。これは,ルワンダの成人人口の94.8%にあたる。また,カラングワNEC議長は,これまで立候補者が選挙法を遵守してきていると述べた。
ヌ NPS長官による刑務所の人権状況改善への呼びかけ(24日付)
ガホンジレ国家刑務所(NPS)長官は,刑務所職員を招集して刑務所の改善に関する講習会を実施した。同講習会は,イギリスの団体「国際刑務所研究」によるものであり,刑務所における人権状況の改善を目的としており,ルワンダ全国から40人の看守が参加した。
ネ コモンウェルスの選挙監視団の到着(28日付)
サリム元タンザニア首相に引率された,13人のコモンウェルスの選挙監視団が,8月初めに到着することが発表された。同監視団は,選挙の準備,投票,選挙に関する周囲の環境などについて監視し,最終報告書をコモンウェルス事務局に提出し,その後同事務局からルワンダ政府,NEC,政党に対して送付される。
(2)経済
EAC共通市場議定書の発効(2日付)
1日,ルワンダが他の東アフリカ共同体(EAC)各国とともに参加したEACの共通市場議定書が発効した。同議定書は,人,物,サービス,資本,労働力の域内自由移動を目的としている。これら5分野の自由化は同議定書発効後に段階的に行われ,ルワンダは,労働力に関しては専門家,技術者,準専門家の移動の自由化,サービスに関しては物流,旅行,金融,通信,交通,教育業の自由化を即座に行う。
(3)経済協力
ア USAIDによる東アフリカ地域発電所への250万米ドルの支援(2日付)
1日,USAIDはCOMESAによる東アフリカの電力共有・取引のためのイニシアティブであるプロジェクトに対し,250万米ドルを今後2年間にわたり支援することを決定した。加えてUSAIDは東アフリカの電力共有・取引に必要な能力強化・政策策定のための支援を行う。
イ アメリカによる中等学校の改築支援(10日付)
9日,アメリカ大使館はキチュキロ郡のマサカ中等学校の引渡式を行った。アメリカによる支援により,同学校は250人用の食堂,教師のラウンジ,12戸のトイレを新たに備えることになった。アメリカ大使館員によると,この支援はアメリカによるルワンダの教育の質の向上のための援助の好例である。
ウ ICFによるエネルギーセクターへの投資増加(15日付)
アフリカ気候投資機関(ICF)は,ルワンダのエネルギー産業改善を図るためのプロジェクトを設立した。同プロジェクトは,インフラ省,電力会社(RECO)等の職員の能力開発を行うことにより,企業によるエネルギーセクターへの投資環境を整えるものである。
エ ムシキワボ外務協力大臣によるMDGs達成状況の発表(17日付)
16日,ムシキワボ外務協力大臣は,ルワンダがMDGsを順調に達成していると発表した。MDGs唱道グループ会合出席のためマドリッドにいる同大臣によると,保健分野でのMDGs達成について課題があるが,母性保健やマラリア罹患率に進歩がみられる。
オ イギリスの保守党員によるルワンダでの協力活動(25日付)
7月末,100人以上のイギリス保守党員がルワンダを再訪し,「ウムバノ計画」第2期を開始する。昨年は44人の保守党員がルワンダを訪問し,ルワンダの開発課題について調査すると同時に技術協力を行ったが,同計画の長であるミッチェル議員(影の国際開発大臣)によれば,今年はより大規模で集中的な能力開発に焦点を当てた技術協力が行われる。医者,医療専門家,および歯科医は地方の診療所で働き,また病院において指導を行う。また,ムンデル議員(影のスコットランド問題大臣)はEACに関する立法に協力を行う。また,経済界の保守党員は資本市場諮問委員会,キガリ金融銀行学院,および民間セクター連合に配置され,ワークショップを行う。
(4)外交
ア カガメ大統領とカビラ・コンゴ(民)大統領の会談(2日付)
カガメ大統領はキンシャサで行われたコンゴ(民)独立50周年記念行事に参加し,2日,カビラ大統領と会談を行い二国間・地域問題,経済協力について話し合った。
イ ウガンダによるジェノサイド容疑者の逮捕とICTRへの引き渡し(3日付)
2日,ウガンダ当局は,ウィンキンディ容疑者をICTRに引き渡した。同容疑者は,コンゴ(民)からウガンダへ密入国し,ウガンダ当局に逮捕されていた。
ウ ウガンダ滞在のルワンダ人の帰還(6日付)
5日,ガチンジ災害対策・難民大臣はウガンダに滞在している1312人以上のルワンダ人を帰還させると発表した。これらのルワンダ人はウガンダに難民資格を申請していたが,ウガンダが政治的迫害の条件を否定したため,資格が与えられなかった。同大臣は,これらのルワンダ人がルワンダに帰還できない理由はないとしつつも,一部の者は1994年のジェノサイドに関与したために帰還を恐れていると報道されている。
エ 国連によるICTR判事の任期延長(6日付)
国連安保理は,ICTR判事の任期を2011年12月31日まで延長することを決定した。また,安保理はケニア当局がカブガ容疑者の引き渡しに非協力的であることについて懸念を表明し,また,関係各国に対して同容疑者を含む未引き渡しの容疑者の引き渡しについて努力するよう呼びかけた。
オ 外務協力大臣による南ア高等弁務官の召喚(7日付)
6日,ムシキワボ外務協力大臣は,グワディソ南ア高等弁務官を召喚し,南ア当局によるカユンバ将軍狙撃事件の捜査に関する懸念を表明した。同大臣は,ルワンダ政府が狙撃に関与したと示唆する記述が南アのメディアに見られることは全くの間違いであり,深く懸念すると述べた。また,同大臣は,南アでルワンダ人のガクウェレレ氏が逮捕され,正当な理由も無く財産が押収されたことについてルワンダ政府が抗議するとも述べた。
カ ウガンダによるFDLR兵士の引き渡し(7日付)
5日,ウガンダ当局は逮捕していたFDLRのンガボンジザ氏をルワンダ当局に引き渡した。また,引き渡しを受けたブレラ郡知事は,ルワンダ軍がウガンダ国境に展開されているという報道を否定し,国境の安全保障について両国が協力していると述べた。
キ フランスによるジェノサイド容疑者逮捕に関する努力(8日付)
フランスで行われた解放記念日レセプションにおいて,カバレ駐フランス・ルワンダ大使は,フランス司法当局によるジェノサイド容疑者逮捕への努力を称賛した。また,同大使は,両国の国交正常化に関するフランス当局の貢献に感謝を示した。
ク 日本大使館の開館レセプション(11日付)
9日,日本大使館はホテル・ミルコリンにおいて開館レセプションを開催した。畑中大使は,日本大使館の開館により,日ルワンダの関係が一層発展する旨述べた。
ケ カガメ大統領のITUブロードバンド委員会出席(11日付)
11日,カガメ大統領が副議長を務めることになったITUブロードバンド委員会がジュネーブで開催される。同委員会は,途上国におけるブロードバンドへのアクセス向上を目的としている。
コ MDGs唱道グループ発足のため,カガメ大統領のスペイン訪問(16日付)
16日,MDGs唱道グループ第一回会合がマドリッドで開催され,共同議長として出席するためにカガメ大統領がスペインを訪問している。2015年までのMDGs達成を目標として9月に開催されるMDGsサミットにおいて国連事務総長を支援するため,同グループは発足した。
サ ウガンダから1800人以上の難民帰還(16日付)
14日夜,1800人から1900人のルワンダ人難民が,ウガンダから帰還する。ガチンジ災害対策・難民問題大臣は彼らに帰還先の住民と協調することをよびかけ,そのために災害対策・難民問題省が全面的な協力を行うと述べた。
シ 唱道グループによるMDGs達成の加速化(17日付)
16日,カガメ大統領はマドリッドで開催されたMDGs唱道グループ会合に共同議長として参加した。同大統領は開会スピーチにおいて,MDGsの達成には民間セクターを巻き込む途上国自身の努力が不可欠であり,リーダーシップ,説明責任,コミットメントの重要性を強調した。
ス カナダ政府によるムゲセラ容疑者の犯罪人引き渡しに関する審査の再開(26日付)
カナダ政府はカナダ国境管理局に対し,ムゲセラ容疑者をルワンダに引き渡すために必要な文書を提出し,ルワンダ政府はこれを歓迎した。ムゲセラ氏は,1994年のジェノサイド実行に決定的役割を果たした演説を92年に行った容疑で,ルワンダ政府から犯罪人引き渡しを求められている。
セ ルワンダと国連による普遍的司法権についての話し合い(27日付)
26日,ムシキワボ外務協力大臣は,フランスとスペインの判事がルワンダの政府高官を訴追していることに関し,近々普遍的司法権と国際法の乱用について国連のような高レベルでの話し合いを行うと述べた。